令和2年度 新たな課題に対応した人権教育研究推進校としての取組
1 研究当初の児童の状況と課題
けやき坂小学校は、川西市北部に位置する創立32年の学校である。児童数は659人(25学級うち特別支援学級4学級)で、子どもたちの多くは、素直で明るい。一方で、子ども同士のつながりが弱く、好き嫌い等で友だちを見て、差別的な発言をしたり、自信のなさから自己防衛のための暴言があったりする。このような特性は「自己有用感や自己肯定感、自尊感情の低さ」などが課題となっていると考える。
2 研究テーマ
「自他を大切にする気持ちを育て、いじめを生まない土壌を築く」
~自己肯定感を育む指導の充実と、違いを認め合える人権意識の育成~
3 ねらい
偏見や差別、いじめを許さず、たくましく生き抜く強さと温かさを持った子どもの育成をめざし、研究主題に沿った取り組みを、教職員全員ですすめていく。授業研究を中心に据え、教育活動全体を人権的視点で見直し、児童の自己肯定感を育み、自他を大切にする気持ちを育て、いじめを生まない土壌を築いていく。
4 具体的な取組
(1)研究の概要(様式1).pdf
(2)各領域における取組
ア 教科における取組
・取組の概要(様式2ー1)【国語】.pdf
3年生書写指導案.pdf
イ 道徳における取組
・取組の概要(様式2ー2)【道徳】.pdf
2年生道徳指導案.pdf 2年生こんなときどうするかなワークシート.pdf
ウ 特別活動における取組
・取組の概要(様式2ー3)【特別活動】.pdf
3年生ゆるスポーツ授業プラン.pdf 3年生ワークシート.pdf
エ 総合的な学習の時間における取組
・取組の概要(様式2ー4)【総合的な学習の時間】.pdf
(情報モラル)SNSワークシート.pdf
5 成果と課題
(1) 成果
年度当初に作成した年間カリキュラムに則り、研究を進めてきた。成果としては以下のとおりである。
① 教職員の指導力向上
2学期、3学期に実施した人権教育校内授業研究において、全教職員が児童の実態把握、教材分析、授業づくり等に取り組み、新たな課題に対応した人権教育の指導内容・方法の充実を図ることにつながった。また、道徳科の内容項目と人権的視点の価値・態度的側面を重ねながら取り組むことで、人権をベースにした道徳科の授業づくりについても考える研修機会となった。
講師を招聘した事後研修会では、「道徳の授業の中で人権的ねらいをどのように取り入れるのか」ということについて理解し、研修を深めることができた。
教職員の指導力向上は、授業研究のみでなく、次項における普段の子どもとのかかわりにも表れてきている。
② 児童の自己肯定感の醸成 ~学校生活アンケートの結果より~
児童向け学校生活アンケートを基に効果検証を実施した。質問項目の「学校にいくのが楽しい」では肯定意見が1.5%の増加、質問項目の「友だちから、いやなことを言われたり、されたりしていない」では肯定意見が8.6%の増加と大きく改善が見られた。人権教育推進への取り組みが、児童の声としてアンケートにも表れ、本校の研究副主題である「自己肯定感を育む指導の充実と、違いを認め合える人権意識の育成」の視点も大切にした取り組みの成果であると捉えている。
また、「先生は、はなしをきいてくれる」の質問項目では肯定意見が3.3%増加、「先生は、がんばったことをほめてくれる」の質問項目では肯定意見が1.5%増加というように、教師の子どもとのかかわりについての項目にも大きな改善が見られた。これは、人権的視点を持って授業づくりや日々の教育活動の見直しを継続してきたことで、教職員の子どもへのかかわり方がいい方向に向かってきたものと考えられる。
一人ひとりの自己肯定感を数値のみで判断することは難しいが、教育内容を検証改善していく材料の1つとして、今後も学校生活アンケート結果に注視しながら、人権教育に関するPDCAサイクルを確立していきたいと考える。
※アンケート結果の増加割合は、いずれの項目も研究指定の2年間における変化
③ 人権教育の取り組みについての確認
人権教育は、研究報告に示されている4分野(各教科・総合的な学習・特別活動・道徳との連携)の取り組みだけではなく、学校の教育活動全体で行われるものである。子どもたちは日々の生活において、身近な大人の行動や態度に影響を受けることも多い。多くの時間を子どもたちと過ごす教職員は、子どもたちにとって、よい見本とならなければならない。子どもたちへの言葉かけ、所作、ほめ方叱り方など、授業内容だけでなく、日々のかかわり全てが人権教育であるということを全教職員で確認することができた。
(2) 課題
課題としては、以下のとおりである。
① 変化していく社会に対応した人権教育
子どもたちを取り巻く社会環境は、日々変化していく。近年増えてきたSNSを介したいじめ等もその一つである。人権課題が発生してから対応するのではなく、子どもたちがSNS等に出会う前に使い方等、しっかりと身につけることが大切である。家庭や必要な機関とも連携し、目の前の子どもたちをしっかりと見据え、社会の変化にも対応した人権教育及び人権啓発を今後も行っていく必要がある。
② 連携の必要性
本校では、年1回人権参観・懇談会を行っているが、今年度はコロナ禍の影響で参観授業を全く実施することができなかった。今後も、学校だけでなく、保護者や地域とも連携しながら、子どもたちの人権を守る視点を持ち続ける必要がある。
③ すべての子どもにとっての居場所づくり
これからも、どの子にも居心地よく過ごしやすい学校となるよう、自己肯定感を高めるとともに、多様性を認め、心の通じ合う人間関係づくりを、人権教育を通して推進していく必要がある。